今日の1曲セレクトは、「帰ってきたヨッパライ」フォーククルセダースです。
まずはデータでーす。
・タイトル 帰ってきたヨッパライ
・アーティスト フォーククルセダース
・作詞 フォーク・パロディ・ギャング
・作曲 加藤和彦
・編曲 クレジット無し
・リリース日 1967年12月25日
・発売元 東芝EMI(東芝音工)
・オリコン最高位 1位
・売上げ枚数 131.3万枚
・オリコンベストテンランクイン期間:1968年1月11日〜3月18日付
えー、長年ランキングってもんを見てくると、ヒットが出る日、時期って案外まとまっていることに気付いてくるもんなんですよね。
まあ、昔から、レコード会社の慣例なのか、四半期毎の最終月(3月、6月、9月、12月)っつうのは、そのころの「旬」といえる、アーティスト、あるいは楽曲をリリースする傾向にあるみたいですね。
もちろん、これは、制作側、その他、云々の絡みがあるわけで、一概にこれが全てとは言えないけど、大まかの傾向を見ると、こんな傾向が見られるんだよね。
特に12月っていうのは、昔から結構、大ヒットの曲が多いように思えるね。
冬ってのは、いつの時代でも、家の中で、静かに音楽でも・・って考えるのは、時代を問わずなんでしょうねぇ。
ま、忘年会、新年会シーズンでもあるし、ガキんちょは、クリスマス、お年玉っていう季節で、他の季節よりレコードを買ってくれる率が高いんで、各社、力を入れるんでしょうけど・・。
でもって、今日も昨日に引き続き、12月25日、クリスマスリリースでの、ミリオンヒットです。
帰ってきたヨッパライ / ザ・フォーククルセダース
実に46年前の曲なので、曲はご存知でも、タイムリーに聴いてた方は、さすがに少ないかなぁ。
実際、ワタシもまだ、生まれてないっすからねぇ、もちろん、タイムリーには聴いておりません!
だけど、曲は永久不滅、エバーグリーンですよね。
だからこそ、タイムリーに知らないワタシらでも、興味があるわけで、とりあえず、私なりの解釈している事を、今日は書いていきましょう。。。(←自慢げ??)
歌っているのは、フォーククルセダースっていう、京都発の3人組。加藤和彦氏、はしだのりひこ氏、北山修氏。
ただ、この3人組、オリジナルのメンバーではないのよね。もともとは京都の学生中心のフォークサークルで、コピーを中心に活動していたらしいですワ。
で、大学卒業を前にフォークルを解散することになり、その解散記念に、自主制作LP「ハレンチ」を制作することになり、この「帰ってきたヨッパライ」は、その中の1曲だったんですよね。
今、調べたら、このアルバムのリード曲でもなかったみたいで、アルバムB面の2曲目に「ひっそり」収録されています。
それだけに、全く自由な発想で、曲が作れたっわけですねぇ。まあ、そもそもが「自主制作盤」なわけで、営利を目的にしているわけではなかったわけで、全てが自由な発想なわけですが、とくに、この曲は、「プロ」では思いも着かないような、コペルニクス的発想の転換な曲だよねー。
「テープの早回し」
こんなの、いつも「まとも」に音楽作っている、プロには、「絶対」というほど、思いも着かない発想だわなぁ。
いや、当時は、まだ、「アーティスト絶対主義」の時代。アーティストの「声」にエフェクトをかけるなんて、「タブー」だったんじゃないかねぇ。発想したくても発想できない状況ではなかったかな。
美空ひばりのボーカルトラックにエフェクトなんぞかけたら、まず間違いなく「切腹」だったでしょ? あの時代。
そういう時代に、なんの疑いもなく、こういう発想をし、実際に曲にするってのが、とんでもない発想の転換だったんだよね。 まさに実験音楽の局地。
まあ、これも、営利主義外の自主制作盤だったから出来た「技」だけどねぇ。
ちなみに、この発想、あの時代、普及し始めた「カセットテープ」では思いつかなかったって言われているんですよね。
「オープンリール」ならではの発想。
え? また、ジェネレーションギャップ? オープンリールテープねぇ。。。
2つの円盤の間に磁気テープをまいた、カセットよりでっかいテープですよー。
46年前は、まだ、こっちのほうが主流だったのよね。
そうねぇ、いまだったら、CD-Rがオープンリールで、MDがカセットって感じかなぁ?
ワタシらの年代は、すでにカセットが主流だったけど、実は、ワタシは、オープンリールも扱ったことあるんだよね。
小学生の頃、ワタシ、放送部でさぁ、なにせ、田舎の学校だったからさぁ、機器が古かったんだよね。
で、カセットなんてなくて、テープはオープンリールだったのよ。
片方のディスクに巻き戻した磁気テープを「にゅー」と手動で引っ張って、ヘッドに通して、もう片方のディスクにテープを固定して再生するんだよね。
結構な手間なんだ、これが。その手間の時間を考えててないと、放送時間に遅れちゃったりしてね。
でも、今の「選曲」っていうお仕事と、「サイト運用」っていうお仕事は、意外とあの時代の経験が「ベース」になっていることが多いですね。
ありゃりゃりゃ、またまた、話がそれた。。。。
なんで、オープンリールで早回の発想ができるかっていうと、このオープンリールっていう代物、テープの進行速度を変えて録音できたんだよね。
テープの進行速度、通常の速度と、半分の速度だったかな ぁ。半分の速度で録音すると、当然、より長くテープに録音できるってことだよね。
これは、当時、まだ、磁気テープが高かったための手段だったようだねぇ。
ただ、半分の速度で録音した音を通常の速度で再生すると、当然、倍速で音が聴こえるってことだよね。
なんで、あんなふうな、へんちくりんな声になっちゃうわけ。
ここから、来てるんだよね。この「帰ってきたヨッパライ」って。
逆に、通常の速度で録音した音を、半倍速で再生すると、逆にとんでもなくゆっくりに聴こえる。音も下がって聴こえるんだよね。
これを利用したのが、昔、東京12ch(現テレビ東京)で放送していた「プレイガール」のタイトルバック音声ぢやないかなぁ。
「プレイガ〜〜〜ル」って、とんでもなく低い声のタイトルバック効果音。
だからねー、おそらく、加藤和彦氏って、発想がめっちゃ鋭いんだろうなぁ。普通だったら「速度が間違ってら」で終わりですよ。
でも、曲としては、通常のBPMだよね、この曲。 だから、逆に考えると、もともとは、めっちゃ「ゆっくり」録音したことになる。
まだ、4チャンネルの時代だろうから、レコード聴くと、ボーカルトラックと、もう1チャンネル、多分ギタートラックと、ピアノなのかな? のトラックを半倍速で録音して、そのまた上に通常の速度でバックボーカル(コーラス)やら、他の楽器のトラックをかぶせて、この曲が出来てるんだよね。
しかも、テンポが変わらないようにしようしたメトロノーム
の音まで、オマケに入ってたりして・・(^^;;;;;
当時のアマチュアが考えたにしては、かなり緻密な作りになっているわけです。
この曲が収録されたアルバム「ハレンチ」は、最初に書いたように「自主制作盤」なので、当然、全国の放送局には回っておらず、関西の放送局のみに配布されたようなんだよね。
で、最初に書けたのは「関西ラジオ」。
ところが、1度かけたところで、リクエストが爆発的に押しかけたワケです。
まあ、そうでしょうなぁ、それまで、全く「耳にしたこと」もない「音楽」だったわけですから・・・。
ここに目をつけた、大手レコード会社が、こぞって、この曲の原盤権を買い付けて、結局、東芝音工(今の東芝EMI)が獲得し、その年の暮れ、12月25日に「臨発」状態でリリースされたようですね。
だから、この曲のジャケットは、本人たちは写ってない。アルバム「ハレンチ」のジャケットをそのまま使ってるんですわ。
逆に、それも、この曲同様、謎めいてて良かったんだろうねぇ。
そして、「オールナイトニッポン」でのOA。これが、この曲の超大ヒットを決定付けたっていうかね。
だから、このタイムラグもあり、チャート上では、最初からベストテン入りではなかったんだよね。
1968年1月4日付、記念すべきオリコン第1回ランキングでは、33位初登場
翌週1月11日付3位、翌18日付も3位、翌25日付で1位。ここから4週連続の1位となっている。
でも、いえることっていうのは、無欲の勝利って言うかねぇ。とにかく、面白く、興味深く曲を見せるっていうかね。
固定観念外の勝利だと思うんだよね。
これは、今でも通じることなんだよね。特にアマチュア、インディーズの方々に言いたいのは、オリジナリティを作れって事ですね。
自分で曲をつくるから、詞をつくるから、いわいるシンガーソングライターだからオリジナリティっていうのは、絶対に違うと思うのよ。これは、完全な履き違い。
自分(達)にしかできない、音(色)であったり、メロディラインであったり、詞であったり、するのを表現できるから、オリジナリティなわけで・・。
既存のものにとれられずに発想の転換・・、しかも、大事なのは、時代に即した発想の転換っていうのかなぁ・・。
それまでの流れとは全く超越した発想の転換っていうことは、時にはそれもありだけど、大抵は、「奇人変人」で片付けられちゃう。
大事なのは、いかにオーディエンスをふりむかせることが出来る発想の転換なんだよね。
これは、かなり難しいこと。
それは、意外と足元に転がってかもしれないわけ。
上で書いたように「帰ってきたヨッパライ」だってそうぢゃない? テープの早回しなんてのと、当時、オープンリールを使っていた方なら、ほとんど誰でも知ってたと思う。そこに気付くか気付かないかの差だよね。
要はいつも見慣れてる風景なんだけど、みんなの死角になっている部分の風景ってあると思うんでよね。ある方向からは陰になっている部分っていうの?
そういう部分を、うまく引き出すことだと思うのね。
いまヒット曲界に必要なことは、その部分ぢゃないかなぁ。
サウンドにしても、メロディにしても、だれだれ風とかぢゃなくてさ。「元祖」っていう部分。
この曲聴くと、いつもそう思いますわ。
※2006年1月に書いたものを再掲載しました。